岡山県法人会連合会会報No64
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(2)事業承継税制の拡充 令和4年度税制改正大綱によると、平成30年1月から10年間の特例措置について、「日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるため事業承継を集中的に進めるための時限措置としていることを踏まえ、令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない。」とコメントしており、令和6年度税制改正においては、特例承継計画の提出期限が令和8年3月31日(改正前:令和6年3月31日)まで2年間延長されたに過ぎない。 経産省中小企業庁によると、70代以上の経営者の割合は3割程度、60代の経営者も特例措置の創設時(2017年)と同規模の3割程度存在するとされている。 また、民間調査会社から、代表者年齢が60代の企業の後継者不在率は46.2%、70代で30.5%、80歳以上で23.8%という調査報告もされている。 イ 特例措置の本則化等   事業を円滑に世代交代させるためには、当事者にとっては最適なタイミングを考慮する必要がある。   そのため、特例措置の適用期限を撤廃し本則化することを求める。   なお、本則化が困難である場合には、適用期限の大幅な延長を求める。 ロ 特例措置の要件の緩和及び手続きの簡素化   特例措置導入後に申請件数は大幅に増加したものの、経産省が当初試算していた件数にはほど遠いものとなっている。   事業承継税制の適用を受けている者は、納税猶予中にも継続届出書を経営承継期間内においては毎年、同期間経過後は3年ごとに所轄の税務署に一定の書類を添付して提出する必要があり、同届出書の提出がない場合は猶予されている贈与税・相続税の全額及び利子税の納付が求められる。   この手続きは事務負担及び関与税理士のリスクは大きく、同制度の申請を阻害している要因の一つである。   そのため、特例措置の要件の緩和及び手続きの簡素化を求める。   (参考)令和30年度税制改正要望事項(経産省)の「事業承継税制の見直し」の「要望の内容」から抜粋「中小企業経営者の高齢化が進んでおり、今後5年間で30万人以上の経営者が70歳(平均引退年齢)に達するにも関わらず、半数以上が事業承継の準備を追えていない。現状を放置すると中小企業の廃業の増加により地域経済に深刻な打撃を与える恐れ」 ハ 改正の際の特例措置   平成30年度の改正においては、それ以前に事業承継税制を適用したものは平成30年度の改正を適用できないとされた。   仮に改正があった場合には、納税者に有利な改正事項は納税者の選択により適用できるよう手当てをすべきである。 ニ 非上場株式の納税猶予制度等の見直し  (イ)非上場株式の納税猶予制度は、相当高額評価でないと効果は薄い。そのため、納税猶予でなく、非上場株式等の事業用財産の相続税の免除あるいは軽減する制度とすべきである。  (ロ)中小企業の株式は、M&A等売買が確定した場合のみ価値を見出し、課税を行うことが望ましい。未実現の利益や資産価値に課税を行うことは企業の継続力を弱め、雇用継続を困難にするため、評価方法を見直すべきである。OKAYAMA 県法連会報|NO.64-5-

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